■ 歌仙式目 ■


あした連句の歌仙式目       平成十二年五月制定
  1. 根本理念
    当会の式目は芭蕉翁の「歌仙は三十六歩也。一歩も後に帰る心なし」を付運びの根本理念とし、転じと付味を重んずる。
  2. 歌仙の構成と面(折)の呼称
    歌仙一巻三十六句の懐紙式の呼称を現代的に面で捉え、初折の表を 起 六句、裏を 承 十二句、名残の表を 転 十二句、名残の裏を 結 六句と称する。 ただし作品の 起・承・転・結 の脇に懐紙式の呼称を伝承するために<オ><ウ><ナオ><ナウ>の略称を付することとする。 構成の中で起の立句(発句)はなるべく切字を用い、続く三十五句を引率するに足る位ある作品とする。起<オ>は品よく収め、承<ウ>十二句は起伏豊かに、転<ナオ>十二句は承で詠めなかった内容を補って縦横奔放に、結<ナウ>六句は穏やかに、挙句はめでたく、明るく詠み収める。起、承、転、結の付運びはすべて打越に障るを嫌い、挙句は立句(発句)と照応させる。
  3. 季句と雑の句
    (1)季句は四季の配分に留意し、雑の句とほぼ同じ句数に収める。
    (2)春秋の句数は三句または四句続け、夏冬の句数は二句または一句とする。ただし、夏立句の場合は三句続ける。
    (3)立句(発句)は当季とし、脇句は立句を引き立てるよう案ずる。季句の付合は季戻りを嫌う。
    (4)季句の付運びは、時候、天文、地理、人事、宗教、動物、植物、の分類により四句または五句去り。
  4. 用字、用語
    (1)立句以外は切字の「や、かな、けり」を用いない。
    (2)立句の使用字(月、花を除く)は一巻不使用。挙句は脇句使用字も嫌う。
    (3)立句使用字以外の同字は面去り、同数字は二度用いない。数字・片仮名の多用を嫌う。
    (4)脇句は体言止め、第三は「て、に、にて、らん、もなし」止めを原則とす。立句が「かな」止めのときは「にて」止めとはしない。
    (5)体言、漢字、仮名止めの五連続を嫌う。
    (6)挙句は漢字止めとするも立句・花の句(前句)漢字止めの場合は仮名止めも可。
    (7)立句以外一巻は五七五、七七のリズムを大切にする。
  5. 題材
    一巻に欠かせないのは花、月、恋、神祇、釈教、無常、酒で、あとは自然と人間をバランスよく付運び、一次元から四次元の曼陀羅を織りあげる。雪、時鳥、紅葉は珍重したい。
  6. 定座、題材の扱い
    (1)花の定座は承十一句目、結五句目とし、こぼさない。
    (2)月の定座は起五句目、承七句目、転十一句目とし、引きあげても、こぼしてもよい。秋立句の場合は第三までに詠む。
    (3)恋は承と転に一カ所二、三句出す。承と転の面で同じ場所に出るのを嫌う。承の恋は淡く、転は濃くが基準。
    (4)起に神祇、釈教、恋、無常、酒、旅体、病体、述懐、懐旧、地名、人名、食、妖怪を嫌う。ただし立句に制約はない。
  7.  付記
     (1)首尾した連句作品の責任は捌きが負うものとする。
     (2)右の歌仙式目の理念は他の連句形式にも寄添う。


注意
1 春(1)には春夏秋冬の夏がない。
2 そこで、春(2)は承の月の座を夏(または冬)一句で捨てて花の定座と挙句を冬(または夏)にしている。
3 春(3)はさらに、承の5句目に冬(または夏)の月を引き上げて、7句目を夏(または冬)の句にしている。
4 夏の花は余花、若葉の花、花田植、花氷が、冬の花には返り花が使える。
5 餅花は新年の正花として使える。また年の花も新年の花として使って良い。
6 秋の正花には、花相撲、花燈篭が使える。
7 花嫁、花婿に季語を付けても花の句になり得る。