第二句集 『梨の芯』
1967年(昭和42年)現幻社刊。


 産経新聞社会部記者から文筆専門になるため独立。折から出版社をやっていた柿沼淳に推められて句集を出すことになりました。
句集の名は、記者時代苦労をかけた妻への思いを込めた

  妻かなし噛みゆけばある梨の芯

からつけました。この本は書店の詩のコーナーに並べられ、俳句を知らない若い男女から買われ、 読者から問い合わせがいっぱいきました。この読者を中心に、現「あした」編集同人の宮本昌彦が中心となり、 宇咲冬男の俳句グループ“梨の芯の会”が生まれました。「あした」のバックナンバーはこの「梨の芯の会々報」をもって第1号とされています。

 集中、師の宇田零雨が選んだ冬男の代表句は以下の10句です。

  枯蔓引くと天のどこかで鈴ならむ
  ガーベラの夜も朱かければこころ冷ゆ
  逝く年の雲のかろさを眩しみぬ
  芽木の夜のしづかに濡るる胸の奥
  白日の夢の藻の花ただよいぬ
  散るさくらふるさと海を持たざりき
  母は消ゆることなき虹よ虹立ちぬ
  いわし雲母のこころと遠く住む
  母想ふ胸の奥まで雪つもる
  バラ匂ふ妻とひとつの灯をわかち