第一句集 句集『心の章』
1958年(昭和33年)刊。


 処女句集は師・宇田零雨の「草茎新書」No8として出されました。
表紙絵は、現在、日本芸術院会員の日本画家、大山忠作画伯と佐渡へ旅したときのものです。
産経新聞記者時代の出版で“記者の句集”ということで当時の新聞協会報の書評欄に採り上げられました。

冬男の「あとがき」より抜粋。

 昨年の秋、機会あつて評論家の中村光夫氏に“おのれの欲することを欲せよ”と、書いていただいたことがありました。またある夏の夜更け、旅の宿で、零雨先生が、庭の池に影を落す、青白い誘蛾灯を見つめながら「冬男君。あの誘蛾灯と、その影と、一つのものが二つ目に映ることは大変なことじやないか。実と虚がそこにある。しかも、取りようではどつちも本当のように───」と。
こういわれた時、はつとしたのでした。
 そして、私の生の道すがら、私の落した影と、私を映すものを止め置くこと、私が欲して生れたものを残して置こう───。
こう、二つの印象がよみがえつて生れたのが、この句集です。