『連句の楽しみ』
 1984年(昭和59年)桐原書店刊。
 暉峻康隆(てるおかやすたか)・宇咲冬男共著


 この本は早稲田大学名誉教授で“桐雨”の雅号を持つ暉峻康隆先生とハガキのやりとりで巻いていた連句が、とても面白い───若い人達への連句の普及書にしたい───という編集者の要望で 春・夏・秋・冬の立句ではじまる、四季両吟歌仙集として出版されました。
 1句ごとに句の付く過程が書かれ、連句入門書(初心者用)として好評でした。
 全国の主要図書館にあり、絶版本。


■推薦 金子兜太氏
  (俳人 現代俳句協会名誉会長)

 頃来(けいらい)の連句流行に伴い連句入門書の出版もなかなかのものだが、それらのなかで特にこの本に興味をもつのは、二人の著者の組合わせに新味をおぼえるからである。
片や暉峻康隆(俳号桐雨)氏は、人も知る近世文学研究の権威であり、同時に飄逸の風味に富む耆宿(きしゅく)でもあって、その話のおもしろさ可笑しさは一度聴いたら忘れられない。片や宇咲冬男。この人は宇田零雨門に育った才気に富む俳人で、すでに一誌を主宰するほどの器量の持ち主でもある。
 飄逸と才気、碩学と新人。この配合の新味は、「四季両吟四歌仙」の付合の呼吸に遺憾なく溢れていて、しかも、そのうちの対座による一巻では、二人の対話が付合ごとに織り込まれている。付合の呼吸に触れつつ、その要領や心構えが闊達に語られてゆくわけで、現代連句の〈生きた習得〉を可能にしてくれるのだ。
 なお、ハガキの往復によって一巻をまく「文音(ぶんいん)連句」を奨めるあたりにも、この、入門書が、連句を現代生活に適応させつつ語ろうとする積極的な姿勢が見えていた。