合同句集 『若菜』

 合同句集『若菜』は宇咲冬男の生家が発行所となり、当時、冬男は“小久保隅烽”と称していました。現在「あした」の編集長の角田双柿と共に二人三脚の「俳句」と「連句」の大きい絆が結ばれました。いわば『あした』の源流です。
〈1955年───昭和30年〉生家の常光院刊。若菜会編。

 序文より

若菜に寄せる詞 宇田零雨
 「此の世といふ荒野の旅人である我々の人生の目的は、よき友を得ることである」
と、スティヴンソンは云つた。まこと、よき友を得たことの幸せ、それをこの「若菜」の人々はしんじつ感じ合つてゐることであらう。それで充分だと思う。それ以上、何を云はねばならぬことがあらう。
 だが───。

 冬男君
  行けどゆけど大虹のしたぬけきれず
  赤とんぼ群れては明日の日を知らず

浪漫精神をよく把握し得た作者である。だから、生々しい体験を、直ちに幻想の世界に移すことによつて、芳醇類ひなき浪漫的香気を醸し出すすべもよく心得てゐる。だが、才能あるものは怠け勝ちなもの。あゝ、それさへ克服してくれたなら、と思うのみだ。